外国育ちの子供達の日本人アイデンティティ
何年か前の話になりますが、主人が外資系証券会社で働いていて学生の就職面談を終えて帰宅した際に、「帰国子女はアイデンティティが曖昧で何者なのか分かりずらく採用しにくい」との感想を述べていたことがあります。日本語と英語が出来るバイリンガルではあっても欲しい人材には思えなかったケースのようでした。
私はこの話を聞きながら二つのことを考えました。先ず一つ目は、「海外生活が長い帰国子女は、日本の風習や文化を十分に理解しておらず、顧客が日系企業の日本人相手の場合にはビジネス上粗相をしかねないので採用しずらいのかもしれない」という点です。そしてもう一つは、「学生が少し外国かぶれに見えてしまったのかもしれない?」という点です。ここで私が言う外国かぶれとは「外国の方がいいと思っている=日本に対する想いや誇りが低い」という意味合いです。
「どの国をいいと思うか」については個人の自由意志なのでコントロールすることは出来ません。ましてや外国(異国)で育ち、その育った国のことを良く思えるのは喜ばしいことでもあると思います。何故なら、その育ってきた外国(異国)でその当人は沢山の良い経験が出来たのではないかと思われるからです。幸い、我が家の子供達も、外国(アメリカ)育ちですが日々楽しく暮らせております。
しかし、同時に強く願うのは「日本に対する想いや誇りを失って欲しくない」ということです。「日本や日本人の良さを十分に知って欲しい」ということです。自分が日本人であることを堂々と胸をはって周囲に言えるようなって欲しいと願うのです。日本という国は、日本国パスポートがあればビザなしで入国出来る国の総数が現在世界一多いとされる国際的にも信用力の高い国なのであります。
正直言いましてこれからはこれまで以上にグローバル化が進むであろうし、先程私が考えた「帰国子女は日本社会に適合しにくい」点はあまり重要ではなくなっていくように感じます。しかし、個人のアイデンティティのバックボーンに「日本人としての日本に対する誇りを持つ」ことは我が家の子供達に教えていきたいと思っております。教えるというよりも体感させ実感させることが大切なのかもしれませんが。
先ずベースとして、我が家の場合は「家では日本語」というルールのもとに日本語でのコミュニケーション力を培うよう努力してきました。帰国時には、出来る限り日本的な観光地(京都・お寺・神社・温泉・名所等)に連れて行き、日本で一般的な生活をし(イオンに行く・ファミレスに行く・コンビニに行く・電車を多用する等)、日本の長男の幼馴染達と再会する時間等を大切にしてきました。機会を見つけては日本のテレビやアニメを沢山みせてきました。そして、私の努力ではなく親族の力ではありますが、例えば、お正月に親族が集まって楽しく過ごす日本での時間などを過ごさせてあげられたことは、子供達の日本人としてのアイデンティティ形成に有益であるに違いないと願っております(感謝)。
ハワイ在住時に日本人先輩ママから聞いた話が思い出されます。彼女のお子さんはキンダー(幼稚園年長)からハワイの名門私立一貫校にESLプログラム(英語が第二外国語である子供達の為のプログラム)枠で合格・入学し、高校卒業時には答辞を読んだ優秀な息子さんでした。以下、彼女のお話の概要です。
「ずっとアメリカの学校に通っていて、子供なりに自分のアイデンティティが日本人なのかアメリカ人なのか分からなくなり悩んだ時期があったみたいなのよね。でも、家では日本語を話させていたし極力日本の文化に触れさせてきていて、ある時ふとはっきり分かったみたい、「自分は日本人だ」と。そしてそれ以後は学校の討論でも『You, Americans are… (君たちアメリカ人は、、)』と自然に日本人としての立ち位置から物事を考え発言出来るようになったみたいだわ。」
アメリカ生活の方が長い我が家の子供達なので、その振る舞いや言動にはややアメリカ人らしい点も多々あるかもしれません。しかし、「自分は日本人であるという誇り」を育みしっかり揺らぐことなく持ち続けて貰いたいと願っております。

雨上がりのシアトルで犬のお散歩をする13歳の次男。
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